日航ジャンボ機が群馬県・御巣鷹の尾根に墜落してから、今年の8月12日で40年となります。当時、事故を伝える速報や生存者が救出されるニュースは、幼いながらに強烈に記憶に残っています。

    この日本航空123便墜落事故を題材に、地元地方紙の悪戦苦闘を描いた小説が『クライマーズ・ハイ』(2003年、文藝春秋)です。小説の中に出てくるのは架空の「北関東新聞」ですが、モデルは群馬県の県紙「上毛新聞」。著者の横山秀夫さんは当時、上毛新聞の記者になって6年目だったそうです。だからこそ描けたノンフィクションのような作品です。

    主人公は、事故関連の紙面編集を担う「全権デスク」を命じられます。戦場のような現場を取材する記者への指示やケア、社会部と政治部の縄張り争い、編集局と販売局の締め切り時間をめぐる抗争、社内の権力闘争、地元政治家への配慮など…まさに新聞社内の興奮状態(クライマーズ・ハイ)を描いています。

    中でも、この本が出た当時、駆け出し記者だった自分にとって心に残っているのは、主人公が語る「チェック、ダブルチェック」という言葉です。新聞にとって誤報や間違いは命取りです。スクープが目の前にあっても、地道に裏を取ること、何度も見直すことが重要です。そうやって日々の新聞が全国でつくられていることを、あらためて思い出させてくれます。

    この小説は、NHKドラマや映画にもなりました。映画は主人公を演じた堤真一さんをはじめ、堺雅人さんや尾野真千子さんら実力派キャストが出演しており、とてもおすすめです。つい先日も、WOWOWで放送されていたのを観たばかりです。